公園であいましょう

 佐倉くんの声が愛しくて。

 不器用な言い訳が愛しくて。

 さっきまで、落ち込んでいたのがうそみたいに、、、。


 触れたいって思った、突然。

 佐倉くんに触れたい、佐倉くんに触れてほしいって。


 ”こう、愛しさがあふれたら自然と相手に触れたいって思うもんよ”

 ”もたもたしているうちに、人生なんて終わっちゃうのよ”

 頭の中に田辺さんの声が聞こえてくる。



   「あー、あのさ、まだ、怒ってるのかな。
    こっちむいてほしいんだけど。」


 
 佐倉くんが何か言っているが、
 頭の中には田辺さんの言葉がリフレインされていて

 悪いけど、ちっとも頭には入ってこない。

 そうだ、桂木 郁。

 今が、人生の勝負所だ。


 
 私は、くるりっと振り返った。

 突然振り返ったので、松葉杖によりかかった佐倉くんが
 びっくりした顔で固まっている。



   「さ、佐倉くん! 私の初めてを貰って下さい!!」


  (言った。言いきった、、、私、、、)
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