公園であいましょう

   「その顔、禁止。止められなくなる。」



 ちょっと顔を赤らめた佐倉くんがそう言って、
 ふいっと目線をそらした。

 その顔って言われても、自分じゃわからない。
 それに、そんな顔になるのは、佐倉くんのせいであって、、、。


 私の”はじめてをもらってください”発言からこっち、
 佐倉くんは私を"郁”と呼ぶ。
 それに、時々、こんなキスをする。

 はじめてこんなキスをされた時は、仕事にもどってからも
 赤い顔して、ぼーっとしてたから、
 田辺さんが本気で心配してた。

 今もまだ慣れたわけじゃないけど、職場にもどれば差し支えなく
 なっただけ、私も恋愛ステップを確実に登っているのだと思う。


  (でも、お泊まりは、、、大きな、大きなステップだ)


 まず、館長に言って休みを取らなければならない。

 
 自慢ではないが、私は自分から休みを取ったことがない。

 見るからにひ弱そうな私なのだが、風邪をひいても一晩寝れば
 たいがい良くなってしまう。

 案外、丈夫にできているのかもしれない。

 それはいいのだが、まさか正直に
 彼氏と出掛けるのでお休みを下さいっと言うわけにはいかないから
 嘘をつかねばならない。

 これが、なかなかに大きなステップだ。


 佐倉くんの家から公民館に戻ってきた私は、
 事務室の自分の席に腰をおろし、頭をかかえた。
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