公園であいましょう

 私達三人は、今、佐倉くんちのリビングで顔を向き合わせて座り
 佐倉くんのいれてくれたコーヒーを飲んでいる。

 佐倉くんは苦虫をかみつぶしたような顔で、
 前を見据えたまま、コーヒーを啜り、

 相沢さん(高級スーツの美人さん)は、ニコニコ顔で
 佐倉くんを見ながら、コーヒーを啜り、

 そして私は、上目遣いに、そんな二人を見ながら
 やっぱり、コーヒーを啜っている。


 
 佐倉くんが、コーヒーをいれながら、説明してくれたところによると
 佐倉くんと相沢さんは、高校2年生の時のクラスメートなのだそうだ。

 ということは、私も相沢さんと同級生になるわけで、
 それで、相沢さんは私を見て”桂木さん”と言ったのだ。

 そう言われればと、私も相沢さんのことを思い出す。

 たしか、お抱え運転手つきの黒いベンツで、毎日送り迎えしてもらっていた
 超お嬢様だったはず。

 そして、そしてその相沢お嬢様の会社(代々続く老舗の呉服屋)が
 企画する着物ショーのモデルとして佐倉くんが選ばれたとかで
 二人は先週、何年か降りに仕事先で再会したのだそうだ。



   「で、なんで相沢さんがここに?」



 コーヒーカップをテーブルに置いた佐倉くんが、口をひらいた。



   「今日ね、佐倉くんの事務所へショーの打ち合わせの事で行ったの」
   
   「それで。」

   「うん、そうしたら佐倉くんがお休みで。でも、どーしても打ち合わ
    せがあるんですって言ったら、ここの住所を教えてくれて。」
   
   「はぁ?」

   「あら、本当よ。だって私、永福屋の宣伝広報部長補佐ですもの。」



 佐倉くんは片手で額をおさえると、俯いてしまった。
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