公園であいましょう

 そう言って、彼女はひとしきり笑った後、今度は
 声のトーンを落として



   「へんに人とつきあっって悲しい思いをするより
    その方がいいですわ。ねえ。」



 と言い、かわいらしく小首を傾げてみせた。
 その仕草はとてもかわいいのに、言ってる言葉には毒が混じっている。



   「そうそう、おつきあいといえば、
    佐倉くんとは、最近お逢いになった?」



 さもついでのような言い方だが、本当に聞きたかった事は
 このことだろう。
 私は、膝の上で拳をぎゅっとにぎると



   「いいえ、逢っていません。」



 と、答えた。



   「まぁ、どうなさったの?親しくしていらっしゃったのでしょう?」

   「連絡がとれなくなったので。」



 どう答えようかまよったが、私は結局、正直に答えた。
 瞬間、彼女の顔に喜色がうかぶ。
 ”まぁ” そう言って隠した口元がニヤリとあがるのが見えた。


 それから、一言、二言話して、彼女は図書室から出て行った。
 
< 131 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop