公園であいましょう
(38)
徹底的にマスコミを無視し、熱愛報道とは関係がないという
態度をとってきたことが功を奏し、ばかげた騒ぎは収まりつつある。
熱愛の真偽を問われるたびに、俺の好きな女性は郁だと、
何回、言ってしまいたいと思った事か。
だんだん我慢ができなくなる俺に唯一、スットプをかけていたものは
夜の公園で、郁が見せたとまどった顔だった。
でも、我慢の限界だったんだと思う。
その日、俺は雑誌の撮影とインタビューで、ある出版社を訪れていた。
インタビューも撮影も終えて、帰ろうとしたところで、
来客があるのでしばらくまってほしいと言われた。
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ガチャリと戸が開く
音がしてふりむくと、ずっと避けていた、相沢涼子が立っていた。
あいかわらず隙のない化粧をし、高級そうな服に身をつつんでいる。
しばし、唖然とした俺に、スッと相沢涼子が近づいてくると
カメラマンが再びカメラを構えるのがわかった。
「やめて下さい!」
俺はさっと身をひき、カメラマンを睨んだ。
俺の剣幕に、カメラマンはカメラを下げ、相沢涼子はそれ以上
近づいてこない。
でも、悲しそうな顔をするとおずおずと切り出した。
「ずっと逢えなくて、寂しくて、、、、だから時間をつくって
もらったの。」
「逢いたかったわ、佐倉くんは元気そうでよかった。」
だまったままの俺に、相沢涼子は一方的に喋り続けた。