公園であいましょう

 何を言っても黙っている俺に、相沢涼子の態度が焦ったものに
 変わってくる。

 何かを期待するような雰囲気だった記者やカメラマンも
 おやっという顔でなりゆきを見守っていた。



   「佐倉くん、なぜ何も言ってくれないの?」



 そう言いながら、相沢涼子がチラリと記者の方を見た。
 とたんに、愛想笑いを浮かべた記者が



   「お邪魔なようだから席を外しましょうか。」


 と言う。

 愛想笑いをうかべて、相沢涼子を見る記者を見た途端、
 自分の中でなにかがはじけとんだ気がした。



   「裏で手をまわしてありもしないことを記事に
    書かせるのはやめてくれ。」



 俺は、相沢涼子を睨みつけると、低い声で言った。



   「何のことかしら?」

   「とぼけるのもいい加減にしろ!」



 青い顔をして、唇をかみしめた相沢涼子の横をすりぬけて
 部屋を出ようとしたのに、きれいにネイルされた指先が
 俺のうでに絡み付く。

 邪険に振りほどきたいのをぐっと耐え、指先をおしもどすと



   「俺にはすきな女性がちゃんといる。
    君とは仕事以上の事はなにもない。」



 と言葉にし、そのまま顔も見ずに部屋をでた


 そのやりとりの結果はすぐにでた。

 一週間ほどたって、事務所経由でおれが知った事は、
 着物ショーのモデルから、井倉翔太をはずすというものだった。
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