公園であいましょう

   「あなたの言うことなら、佐倉くんも聞くのでは
    ないかと思って。」



 横をむいたまま呟くようにそう言った彼女は、再び
 私の方へ向くと、ずいっと体を乗り出し、
 私を睨むように見た。



   「はっきり申し上げるわ。あなたは佐倉くんにふさわしくない。
    だから、ご自分から身を引いた方がいいわ。
    それが、モデル井倉翔太を守ることになる。」



 何も言えないでいる私をみると、相沢さんはふっと勝ち誇った
 ような笑いをうかべ、乗り出していた体をおこした。



   「ご自分の立場はわきまえていらっしゃるようね。」



 きれいに口紅がぬられた唇がきゅっとあがり、
 長い爪の指先で、紅茶のカップの縁をなぞる。



   「モデルなんて仕事、実力がどうのこうのより結局は
    コネが一番大切なんですもの。
    私がバックにつけば、」

   「、、、しないで。」

   「えっ?」
  
   「バカにしないで。」



 自分の声とは思えないほど、低い声がでた。



   「佐倉くんがモデルの井倉翔太として輝いているのは
    実力以外のなにものでもないわ。
    相沢さんの力必要なら、佐倉くんはちゃんと自分から
    相沢さんに頼むはずよ。
    佐倉くんが必要ないというなら、余計な事はしない方が
    いいわ。」
< 139 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop