公園であいましょう
(きゃっ)
私は、あわてて耳をおさえた。
「なんか、ソワソワしてない? 郁ちゃん。」
「いいえ、決してそんなことは、、、。」
「それに、郁ちゃん、きれいになったしね。」
「えっ。」
「恋する乙女は、きれいになるものよ。
我が公民館の姫にも、ついに恋がやってきたか。」
田辺さんは、上機嫌にフンフンと鼻歌を歌いながら、去って行く。
「きれい?私が?」
田辺さんの後ろ姿を確認しつつ、化粧室にとびこんだ。
鏡にうつるのは、さえない若い女だ。
パーマっ気のないまっすぐな黒髪を、ひとつにくくり
青白いほど白い肌は不健康そうだ。
どこから、どうみても、地味な私。
(そういえば、佐倉くんにも言われたな、地味だって)
佐倉くんが、人目のない小さな公園でしか、逢おうとしないのは、
こんな私と一緒にいるところを
他の人に見られたくないから、かもしれない。
はぁーと大きなため息がでた。
もし、これが、田辺さんの言うように、”恋” なんだとしたら、”恋”って結構やっかいなものだ。
今まで、見て見ぬふりしてきた自分に、
どうしても向き合わなければ、ならない。
向き合った自分は、決してよくも美しくもないわけで、、、。