公園であいましょう

 朝と昼間と夕方は、来館者も多いので、ずっと図書室につめているが、
 それ以外は、来館者の有無にあわせて、対応するようにしている。

 昼前のこの時間は、めったに人はこない。

 めずらしいこともあるものだと、図書室に行き
 カウンターの中に入った。


 
 カウンターあたりには、人影はない。

 きっと、本をさがして本棚と本棚の間にいるんだろう。

 そう思った私は、カウンターの上の要修理の本を取り上げ
 テープ貼りをはじめた。

 
 長い間、何人もの人に借りられ、読まれた本は
 表紙がめくれたり、ページ破れがあったりする。

 だけど、こうやって修繕すれば、まだまだ読むことができる。


 ここは、地区の小さい図書だから
 予算がたくさんあるわけではない。

 だから、本は大切に手入れをして長く使わなければいけない。
 
 新刊の本もいいけれど、長く親しまれ、読まれてきた本には
 またちがった良さがあると私は思う。

 
 ちょっと汚れて、ところどころ破れていて、見た目は悪いけど、

 そう、見た目は悪いけど、、、、、

 華々しさも、目を引くところもないけれど、、、、


 なんて、まるで、私のようじゃないか、、、、



 私は、今、テープを貼り終えたばかりの本を、しげしげと眺めた。
 なんだか、いつもに増して、愛しく思える。

 
 
 (私の心の破れも、この本みたいに、誰かがそっと
  なおしてくれたら、、いいのに、、、)


 そんなことを考えていたら、カウンター前に人影が立ち
 

 
 「この本、お願いします。」

 
 という声と共に、私の目の前に本がさしだされた。


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