公園であいましょう
「この件で一番振り回されたの、翔太さんじゃないですか」
そう言って、君平が口をとがらせた。
まあ、たしかにあの写真集の制作ではやきもきさせられた。
岩間さんはこちらがそろえたモデルが気に入らず、
撮影は何回もストップ。
とうとう写真家の方を変えるかという話まででてしまった
が、岩間さんは突然制作を再開。
モデルが決まらなかった部分は大幅にへらされた挙げ句
俺たちに知らない間に撮影が終わってた。
問題のカットには、誰も知らないモデルがきちんと
おさまってた。
俺とそのモデルが絡む部分は、全部なしになり、
俺ひとりのカットがふやされて大変だったけど。
できあがった作品はどれもすばらしく、
文句のつけようすがなかった。
でも、なんとなく引っかかる事がある。
その問題のモデルだ。
若い女性で、どこの誰ともわからないんだけど
俺は、どこかで逢ったような気がしてならない。
”彼女はこの世に存在していないのと一緒だから
それはありえないよ”
って、岩間さんは訳のわからない否定をしてたけど。
「はいはい、写真集の話しは終わった仕事だからおいといて
さて、クリスマスにお正月、じゃんじゃん仕事が
入ってるわよ。
休みなしってことでいいわね。
そのかわり、一月末に休暇を順番にとりまーす。」
真島さんの声に
「ありえねー。」
「やった、休みだ。」
といった声が重なっていく。