公園であいましょう
(3)
 公民館の裏口から入って、あわてて事務室に駆け込むと、
 窓際の席に座って資料をみていた村瀬館長が
 ジロリとにらむようにこちらを見た。
 
 私は、反射的に机の上の数冊の本をつかむと、


   
   「図書の方へいってきます。」


 
 そう言って、事務室をとびだした。

 ロビーをぬけ、蔵書のあるコーナーへむかう。


 ここは、地区の公民館だけど、結構な大きさの図書室がある。
 この地区は、昔から住宅地だったせいで、図書の需要が高く
 小さな市民文庫からはじまった図書室が、今でもきちんと運営されているのだ。


 高校を卒業した私は、大好きな本にかこまれた仕事がしたくて
 司書をめざした。
 
 司書にはなれたが、司書として働ける職場は少ない。
 
 それでも、区立の大きな図書館に、なんとか臨時の職をみつけ
 そこから派遣されて、この公民館で司書兼公民館事務の
 仕事に就いている。

 とにかく小さいときから本が好き。
 小学校から高校まで、ずっと図書委員をやっていた。
 
 私の通った高校は、部活動がさかんで
 委員会の仕事はおざなりにされていたけど
 私は三年間、図書委員の仕事をこなした。
 
 だから、ついた渾名が、”委員長”。
 
 私以外のみんなは、委員会に出てこず、一年生のときから何でもこなしていたから。

  
  (佐倉くん、ちゃんと憶えていたんだ)

 
 持ってきた本を本棚に戻しながら、さっきまで一緒だった彼の事を思い出す。

 
  
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