手の平だけは、私のために【完】
それすらもダメ?
――雄星は、佳子先輩のことが好きらしい。
これは、きっとそこらへんに石ころと並んで転がっているような、よくある恋愛話だ。
好きな人には好きな人がいたっていう、世の中に腐るほど溢れ返っているベタな失恋。
「――フラれるよ、雄星なんか」
「おまっ……、マジで感じ悪ィーな!」
ウソ。ほんとはフラれるのはあたしの方。
何も知らない雄星は、あたしの憎まれ口に耳を塞いで、拗ねたように唇を尖らせた。
机にべたーっと体を倒して、はーっと深いため息を吐く。
「……や、そんなの俺だって分かってるけどさあ」
「うん」
「……けどさあ、好きになっちったもんはしょうがねーじゃん」
「バーカ」
そんなのあたしのセリフだ。
雄星に好きな人がいるって知ったって、変わらずまだ好き。
一緒にいたいから、聞きたくもない恋愛相談に乗って、友達って立場を必死で守ってる。しょうもないよね。どうしようもないよね。
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