手の平だけは、私のために【完】
あたしの髪をぐちゃぐちゃにするのも、泣きそうなのに気付いてくれるのも、全部雄星が良い。
他の人じゃやだ。他の人にしちゃやだ。
あたしだけが雄星を独占して、雄星だけに独占されたい。
こんな風に、部活のない放課後は二人っきりで教室でおしゃべりしてるのとか、部活後は自転車に二人乗りで駅まで行くのも、あたしだけの特権にしといてよ。
不意に頬から雄星の手が離れたから、あたしも彼の頬から自分の手を外した。
じんじんするほっぺは、つねられたからじゃなくて、雄星に触れられたから。
こんな時間が永遠に続けばいいのに。
「……雄星が、佳子先輩と付き合ったら、やだな」
「んー?」
ふと本音が漏れてしまっていたことに気付いて、ちょっと焦る。
だけど彼はとくに気にする素振りもなく、間の抜けた声で返事をしただけだったから、ちょっと安心した。
「なんで嫌なの? 弥生ちゃん、ヤキモチ?」
「ち、違うよ。佳子先輩はあたしの憧れの人だから、雄星なんかと付き合ったら残念だなっていう、それだけ!」
「ちょー失礼なやつじゃん」
ちょー失礼なやつだよ、悪いか。