手の平だけは、私のために【完】
「……先輩、遅いね」
「だなー」
ふと呟いて、うっかり溢れ出そうになった涙を雄星にはバレないように人差し指で拭いとった。
……あたしの片想いはいつ終わるのだろう。
雄星と先輩が付き合ったら、だろうか。二人が手をつないだときだろうか。放課後を一緒に過ごしたらだろうか。自転車に二人乗りしたところを見てしまったときだろうか。
この気持ちは一生、報われることも諦めることもないまま、なのだろうか。
ちらりと目をやった時計の針は5時をとっくに越していて、雄星の表情は緊張で強張っていた。
「……どーしよ弥生ちゃん、緊張してきた」
「今更なにを。補習のある先輩に告白するためにここまで待っといて」
「……やっぱ今日はやめようかな」
迷うくらいならやめてよ。
って心の悲鳴は、喉元まで出かかってなんとか止まってくれた。
そんなこと言う権利が、ただの友達であるあたしにないことは、知ってるから。