手の平だけは、私のために【完】
――雄星が、先輩に告る。今日、このあと。
別に頼まれたわけでもないのに、それまでの暇つぶしに雄星に付き合っているあたしは何がしたいのだろう。
告白の妨害なんか、する勇気もないのに。
「……雄星なら大丈夫だよ」
「え?」
「雄星ならフラれても大丈夫!」
「そっちかよ」
吹きだして笑った大好きな彼の顔からは緊張の色は消えていて、あたしの頬も自然と緩んだ。
その裏で、心はドロドロと汚い感情ばかりを生む。
――フラれちゃえばいいのに、雄星なんか。
あたしのことを好きになっちゃえばいいのに。あたしは雄星のこと、ずっと前から好きになっちゃってたのに。
鼻の奥がツンと痛くなって、切なくって、逃げだしそうになる太股に爪を立てて耐えた。
「――ごめん弥生ちゃん、ゆーせ、お待たせ」
そうすれば、ちょうど教室の後ろの扉が開いて、佳子先輩がひょっこり顔を出す。