手の平だけは、私のために【完】
「か、佳子先輩」
「なにー、話って?」
すっと立ち上がった雄星の表情は再び緊張でかちかちになってて、いつものあたしなら大笑いするはずなのに今日は違って。
大声を上げて泣きたくなった。
助けを求めるようにこっちを見てくる雄星からわざとらしく顔をそらして、知らんぷりしてやる。
バーカ、あたしはそこまで心が広くない。
「……あ、すいません、佳子先輩、ちょっと廊下で待っててもらってもいいすか」
「うん、わかったー」
にこにこ笑った先輩は、ご丁寧に教室の扉を閉めて出て行った。
また二人きりになった教室で、雄星がふーっと息を吐く。
「……言ってくる」
「うん」
「……弥生、手、貸して」
「え、なんで……」
言うより先に、あたしの右手は雄星の大きな両手に包まれていて、一瞬心臓が止まったかと思った。