月だけが見ていた

「……葉子にとって、」


永遠にも思えた、長い長い沈黙の後
主任はようやく口を開いた。



「俺って何なの?」

「……」

「苦しめるだけの存在って事かよ」



初めてだ

この人の、こんなに悲痛な声を聞いたのは。



「なぁ?」




否定しない私は

ズルい。
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