月だけが見ていた

「……」


言葉が 出ない。

これは、夢?



「夢じゃないよ。」



私の心を見透かしたように
少しだけ視線を落として司くんは続けた。

柔らかな黒髪が、サラリと頬に落ちる。



「会いたかったんだ。上原に」

「司くん…」



首筋のほくろ。
日焼けした腕。
制服のワイシャツは、一番上のボタンだけが外されている。

17歳の彼が、いつもそうしていたように。
< 25 / 84 >

この作品をシェア

pagetop