月だけが見ていた
最初は
おそろしく仕事の出来る女だと思った。
「…上原」
「はい」
「これ、全部一人でやったの?」
提出された企画書をめくりながら、呟くように問いかけた。
「はい…いかがでしょうか」
新卒で我が社に入社した彼女の教育係は、主に別の部下に任せている。
普段あまり関わる事のない俺に呼び出され、彼女は心なしか緊張しているようだ。
俺は無言で書類のチェックを続けた。
全体の構成、文章力、資料の信憑性、…
「完璧。」
俺が力強く印を押すと、上原は明らかに安堵の表情を見せた。
……お、笑うと結構好み。