月だけが見ていた

「お待たせしました」

「おう。」


ほわんと湯気が上るマグカップを手渡すと、主任はさっそく口を付けた。


「…美味い。ありがと」

「はい」


くるりと背を向けて、私はまた自分のデスクへ戻った。

主任と二人きりのオフィスには、私がキーボードを叩く音だけがカチャカチャと響いている。
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