月だけが見ていた
約束の時間を過ぎても
司くんは待ち合わせ場所に現れなかった。
「どうしたんだろ…」
はちきれんばかりに膨らんでいた期待は
風船みたいにしぼんで
代わりに不安が胸を埋め尽くしていく。
「……」
携帯の発信履歴から司くんの番号にかけるのも
もう何度目かわからない。
「やっぱり繋がらない…」
映画が始まる時間になっても
司くんから連絡はなかった。
司くん…どうしたの?
『楽しみだね』って言ってたのにーーー
「あ、」
鞄の中で震える携帯電話に気がついて
私はほっと息を吐き、画面を見た。
ーーーあれ、司くんじゃない・・・
「もしもし」
『葉子!!??大変!!!』
電話をかけてきた高校の友だちは、ほとんど叫ぶように言った。
『司くんが・・・っ、』
え?
『司くんがさっき四丁目の交差点の所でトラックにはねられて、
亡くなったってーーー!』