月だけが見ていた
司くんの言葉を遮って、私は言った。


「せっかくまた会えたのに…何でそんなこと言うの?」


涙でぼやけて、司くんの表情はよく見えないけれど
おそらく、困った顔をしているんだろう。


「…もう離れるのやだよ」

「…上原、」

「司くんが好きなの」



ずっと ずっと ずっと
あなたの面影ばかり探して生きてきた



「置いていかないでよ…」



抱きしめられた体の温度を
何度もくれたぎこちないキスを


少し切ない

その 笑顔を



「ーーー 私も一緒に連れて行って」

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