月だけが見ていた
「……」


彼女へと伸ばしていた手を引っこめて
代わりに、タオルケットをかけてやる。

すうすうと規則正しい寝息が、間もなく俺の耳に届いた。


「……寝たか」


反対に、眠る気も失せた俺は
そのままベッドサイドに座って、乱暴にタバコに火を付けた。

煙と一緒に ため息も吐き出す。





ーーー上司と部下。

そんなありふれた関係に嫌気がさして

終止符を打ったのは、俺だった。
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