月だけが見ていた
あれから更に3年の時が過ぎ
何度も葉子に触れてきた。

けれど、葉子の口から男の名前が出たことは
あの日以来、一度も無い。


「葉子」


名前を呼びながら、深く混じり合う。

最初は、葉子も俺の気持ちに応えてくれていると思ってた。



「葉子…」



でも 

俺を見つめる葉子の眼差しは、いつだってどこか虚ろで
別のどこかに向けられているようで

度々、俺を不安にさせた。



「俺だけ、見ろよ」



思わずそんな言葉が、口をついて出た。

俺の体の下にいる葉子が、目線を動かして俺を見る。


「え…?」

「俺だけ見てろっつってんの」
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