月だけが見ていた
上原葉子 4
私と司くんの間を 風だけが通り過ぎていく。
「……上原」
司くんは
ただただ真っ直ぐに、私を見ていた。
「それがどういう事か、わかってる?」
『私も一緒に連れていって』
さっき自分で発した言葉が、頭の中に甦る。
「…うん」
微かに震える両手をぎゅっと握りしめて、私は頷いた。
怖くないといったら、嘘になるかもしれない。
でも、もう一度司くんの隣にいられるのなら
迷いなんてーーー
「……出来ない、よ」