月だけが見ていた
「ずっと見てた。上原のこと」

司くんの声に、顔を上げる。


「ちょっと心配だったけど、もう大丈夫だね」


月明かりに照らされた司くんの笑顔に



「俺より上原を守れる人がいるから。」



私の胸は張り裂けそうだった。



「司くん……」



司くんは自分のポケットをまさぐって、再び手鏡を取り出した。
そのまま開いて、こちら側に向ける。


「見て」


そこに映っていたのは、もう高校生ではなく
27歳の私だった。

服装もスーツに戻っている。


「そろそろだ。」
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