月だけが見ていた
上原葉子 5
病院から一歩外へ出ると、こちらへ一目散に駆けてくる人影が視界の端に映った。
「あれ、」
足を止めてそちらを見る。
「修治さん!?」
「お疲れ。」
彼はイタズラが見つかった子どものような顔で、こちらに近付いてくる。
「何で…仕事は?」
「抜けてきた。お得意さんとこ行ってきまーすって」
「えぇっ」
「何だよ。ホラ家まで持ってやるから荷物貸せ」
そう言って彼は素早く私のトートバッグを自分の肩にかけ、歩き出した。
…そんなに重くないから大丈夫なのに。
そんな事を思いながら、私も慌てて彼の背中を追いかける。
と言っても、最近は私のペースに合わせて歩いてくれるので、置いて行かれたりはしないのだけど。
「息抜きだよ。たまにはいいだろ?」
修治さんはそう続け、空に向かってわざとらしく伸びをした。
その仕草からも、そわそわと浮き立つ気持ちを必死で抑えているのが伝わってきて 私は思わず吹き出してしまう。
「な、なんだよ」
「嘘ばっかり。本当は気になって仕方なかったんでしょ?」
私の半歩先を進んでいた足を止め、
修治さんは振り返る。
「……当たり前だろ。仕事なんか手につかねぇよ」
再び笑う私に、彼はで?と詰め寄ってきた。
「どっちかわかったか?」
私はゆっくりと深呼吸して
瞳を輝かせる、最愛の夫を見つめる。
「……女の子でした。」
「あれ、」
足を止めてそちらを見る。
「修治さん!?」
「お疲れ。」
彼はイタズラが見つかった子どものような顔で、こちらに近付いてくる。
「何で…仕事は?」
「抜けてきた。お得意さんとこ行ってきまーすって」
「えぇっ」
「何だよ。ホラ家まで持ってやるから荷物貸せ」
そう言って彼は素早く私のトートバッグを自分の肩にかけ、歩き出した。
…そんなに重くないから大丈夫なのに。
そんな事を思いながら、私も慌てて彼の背中を追いかける。
と言っても、最近は私のペースに合わせて歩いてくれるので、置いて行かれたりはしないのだけど。
「息抜きだよ。たまにはいいだろ?」
修治さんはそう続け、空に向かってわざとらしく伸びをした。
その仕草からも、そわそわと浮き立つ気持ちを必死で抑えているのが伝わってきて 私は思わず吹き出してしまう。
「な、なんだよ」
「嘘ばっかり。本当は気になって仕方なかったんでしょ?」
私の半歩先を進んでいた足を止め、
修治さんは振り返る。
「……当たり前だろ。仕事なんか手につかねぇよ」
再び笑う私に、彼はで?と詰め寄ってきた。
「どっちかわかったか?」
私はゆっくりと深呼吸して
瞳を輝かせる、最愛の夫を見つめる。
「……女の子でした。」