甘い恋愛なんて知らない
しばらくの間樹を眺めていると、一人部屋のドアがノックされた。
「はい?」
入って来るであろう人物には大体見当がつくが、念のため、声をかける。
「お、俺だけど。」
若干上ずった返事をし、病室へ入ってきたのは
小畑 輝。
毎日欠かさずに見舞いに来てくれる唯一の存在であり、同時に、私が助けた子供の兄だ。
「おはよう、かな?」
只今10時という微妙な時間だったので、挨拶が疑問系になってしまった。
「お、おう。」
「何でそんなに緊張してるの?」
「別に緊張してねぇよ!」
私がクスクスと笑いながら尋ねると、恥ずかしそうに言った。