泣き虫イミテーション
 私とミツが兄弟。
 嘘だ。
 正しくは、私とミツは婚約者。
 親が選んだことで、私たちがお互いを好きになる必要はないの。
 ただ、私を選んだのはミツ。
 ミツは私か姉かの2択で私を選びとって、そして私に恋をした。
だから私がミツを好きなんじゃなくてミツが私を好きなんだよ。
私は一番になりたいから、ミツが私を世界で一番ってくらい好きになってくれるなら、私はミツを好きになるよ。
 山田くんだっけ?彼だってそうだよ。
 世界で一番に私を選んでくれるなら好きになるよ。
 重いかな。おかしいかな。
 でも私は全部くれないなら全部いらないの。
 私を唯一絶対に選んでくれるのは、きっとミツだけだよ。
 だからミツといるの。
 ミツが他の女の子と遊ぶのも、本当は全部私のためだよ。
 盲目に恋するだけじゃなくて、沢山の星の海から私だけを選んでくれる。
 それが私とミツがいる理由だから。

 それは王子様を待つ純真無垢のように。
汚れながらも、歪みながらも願うこと。

 誰でも良いから、
 誰でもいいから私だけをみて。

 思いに質量を与えて私を押し潰して欲しい。

 二衣の長い独白は、彼女のコンプレックスが産み出した歪んだ願望。幼少期、それを叶えてくれた光成。
 朔良や他人が入れないであろう強固な絆が伝わってくる。
 
「だから山田くんじゃだめ。ミツじゃなきゃ足りないの」

 そして―――

(もうミツだけじゃ足りないの)

(だからどうか、私に惹かれて。弱く脆いと手をさしのべて)

 心の孔を埋めるために、通りがかりの君すら利用しよう。
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