泣き虫イミテーション
また、いないんだ。
冷たいシーツに包まれて眠るのが、苦しい。心臓が痛むから。でも構わない。
この痛みすら、ミツがこれから塗りつぶす愛情の隙間。
静けさをまぎらわす方法など幾らでも知ってる。
ミツの代わりにこのベッドに誰かをさそえばいい。


「僕と二衣ちゃんはね、君が思うほど浅くない。」

光成はそう言って笑う。

「二衣ちゃんは僕という人間を理解してるからね。きっと今頃浮気がてら他のやつに手を出してる。寂しさをまぎらわすには別に僕に限らなくていんだもの」

スマホが震えて二衣からのメッセージが表示された。

<二衣 今日は夕御飯どうするの?>

それを真波は苛立ちながら見る。

返事は一向に来ない。きっと光成に何かあったんだなと思う。思うだけ。
二衣は何もしない。何もしなくていい。そういうルールだから。
二衣は光成とのグループをとじて、スクロールしたさきにある一つを開く。
ほとんど履歴のないつい最近のもの。相澤朔良とのグループ。たった一言つぶやいて、スマホを閉じた。
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