泣き虫イミテーション

偽物の浸透

朝、目が覚める。
冷たくはりつめた空気。昨夜いつ眠ったのかわからないままリビングに向かう。
耳を澄ますとテレビの音が聞こえてくる。
そこでやっと昨夜のことを思い出した。

(朔良くんと眠くなるまでって、トランプしてたら寝ちゃったんだっけ…)

リビングでは朔良がソファーで寝ていた。まだ眠り始めたばかりなのか、近くに置かれた珈琲は温かい。

(何も用意してないのに私はねてしまったのか)

毛布を出しておいてあげれば良かったなと反省しながら、二衣は一度部屋に戻り自分の使っていた毛布を朔良にかけてやる。

昨日も光成は帰って来なかったかと嘆息する。土曜日の朝5時30分。朔良は寝ていて、ニュースはつまらない。二衣はソファーの前に腰をおろして寄りかかる。

｢はあ…、静かだなぁ｣