泣き虫イミテーション
光成が真波を送りに言っている間、二衣は食事のあとをかたづけ、風呂にはいる。
熱いシャワーを浴びながら二衣は考えていた。
 まるで汚いものでもついているみたいに自分の唇を、肌をこする。
足元をひんやりと冷たい空気がながれて、振り向いた。あいたドアから光成が顔を覗かせている。

「お帰りミツ。」

二衣は肌を隠すことなく、光成をみた。流したままのシャワーからでた湯が二衣の肌を濡らし伝っていく。

「ただいま、俺も入っていい?」

「ん、好きにしろ」

光成が服を脱ぐあいだに二衣はボディーソープの泡を流し熱い湯を湛えたバスタブに足から浸っていく。
再び入ってきた光成が体と頭を洗ってからこちらを向いた。二衣は湯船から上半身だけが出るようバスタブの淵に腰掛け光成に背中を向けた。光成は肌にはりついた二衣の髪を後ろに集め、コンディショナーをつけた手でゆっくりと鋤いていく。長い髪はほとんどからまることなく光成のゆびを通して、その指先が背の細いラインを撫でるたびに二衣は悶えるように身をよじった。
しばらくしてから二衣のおとがいにゆびをかけ上を向かせてから湯が顔にかからないようコンディショナーを流していく。

「はい、さらさらになりました」

「ん、どうもありがとう」

二衣がまた湯船に入り直すまえに、光成は二衣を後ろから抱きすくめ、首筋を食む。
「ひぁっ、」

「ねぇ、二衣ちゃん?」

「な、なんだ?」

「他の男にキスしただろ」

「あぁ、よくわかるね」

「さっき唇触ってたから。なんかあったんだ?」

二衣は光成を湯船に引き込みながらそれに答える。

「内緒だよ」

「隠し事なんていじわるだね」

二衣が光成に股がって膝だちに視線を合わせる。
二衣は光成に目を閉じさせ、唇を指でなぞる。そして耳に手をかけて上を向かせて光成の唇にキスした。触れあわせるだけの
幼いキス。

「私と君の仲でしょう。大目にみてよね」
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