泣き虫イミテーション
「もうすぐ文化祭だよ、二衣さん。」

「ん?そうだね」

抱きしめられたベッドのなかで、互いの体温に浸る。足を絡めて腕は体を包み、まぶたを開ければ目が合う。

「文化祭なにやるのかな」

「うちのクラスの実行委員の子が、すごい張り切ってた。面倒なのはいやだ」

「…西野?」

「うん、そいつ。知り合いなの?」

「一年のときにちょっと。」

「ふーん、どうでもいいけど」

二衣はそこまでしゃべり終えると、光成に体を近づけて、胸に顔つけた。心臓の音が骨伝導しているみたいにはっきりときこえる。ちょうど二衣の頭が間近にきて、光成は額に口づける。

「……シャンプーの、匂いがする」

「ミツ、聞いていいよ。もう今日私になんかあったなーって気づいてるんだろ」

「…うん、なにがあったの?」

「さながら二人目の王子様だよ」
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