泣き虫イミテーション
教室中が私達に傾注している。視線が刺さって、目を背けたくなる。知らないふりをしたくてたまらない。

まだ気持ちが追い付いてないのに、姉さんが手を引くままにミツのところまで来てしまった。

なんで姉さんがここに来るの。

野次馬のように着いてきたクラスメイトが廊下からこちらを見ている。その中には朔良くんもいる。

どうしよう。ミツとはずっと他人のふりをしてきたのに。どうしよう。どうしよう。せっかく隠し通して来たのに、私とミツの関係が暴かれてしまう。どうしよう。姉さんのせいで、言葉で、作り上げた私と言う理想が、壊れてしまう。

「みつくん、久しぶり」

光成は一瞬目を泳がせて、言い逃れを探した。いまこの瞬間になにかごまかして他人のふりができないかと考えた。

けれどすぐに諦める。姉妹と繋がりがあればそれは家族ぐるみの付き合いだと、周囲に思われてしまうだろうが、まだ許容範囲なはずだ。

「お久しぶりです、一衣さん」

二人の困惑、焦燥を他所に一衣は話を続ける。

「みつくんは休憩いつなの?良ければこれから三人で回りましょう。学校を案内してほしいの。せっかく久しぶりに会えたんだから、色々話しもあるし」

二衣に視線を送る。どうすればいいのか分からないのに二衣は顔を伏せたままだ。

(…二衣さんと一衣さんを二人きりにして平気なのか?でも俺が一緒に回るのは……)

「それとも二衣と二人で回る予定だったのかな?」

「…ねえさ「婚約者同士「ん!やめ」水入らずで「てっ」

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