泣き虫イミテーション
偽物の登壇
「さぁて、橘ちゃん。」

西野のところには若松と光成がいた。

「そろそろ来るかと思って待ってたよ」

光成の手にはロミオとジュリエットの台本が握られている。それを一瞥してから二衣はにやにやと笑う若松をみた。

「姉さんは?」

「帰ってくれたよ。」

代わりに光成が答える。

「ミツ、西野くんも私たちのことを知ってるのね?」

「若松さん曰くそうらしい」

「私と葉月は大概のことは共有しているからね。でも朱本との約束で噂は流してないし、私も葉月もこのネタはまだ誰にも渡してなかった。」

葉月は西野の名前だ。若松と西野は学年のなかで情報通といった感じで、色んな恋愛相談にのっていると聞く。

「じゃあまだ、噂は確かなものにはならないんだね」

「そうは言っても橘ちゃんと朱本のことだから、回りは早いよ。最近相澤とも噂になってたのがあるから、尾ひれもつきまくりだね。」

「面倒なことを…」

思わず家にいるときの調子で悪態をつきかけて留める。手遅れ感は否めなかったが強引に話を進めた。

「どうしたら、いいと思う?」

「簡単だよ」

若松は不敵に笑った。そしてその解に等しく二衣もたどり着いていた。
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