泣き虫イミテーション
偽物の冷厳

「山田に謝れよ」

昨日のクラスメイトたちと勉強会をしていた時のことだ。相澤朔良という、クラスでもあまり目立たない男子がめずらしく二衣に話しかけてきた。
呼び出されたのは勉強会後の教室で、山田−−−先日フッた男子生徒へ謝罪をしろとのことだった。
二衣はあえて高慢に「なんで?」と聞き返す。余裕綽々に微笑みながら。
朔良は苛立ちを露にして、二衣の肩をつかんだ。

「あんたには思いやりってもんがないのかよっ!確かにあんたからすれば迷惑なのかもしれねーけど、相手はあんたを好いてるんだぞ!?」

「でも、私の本質を見抜けない程度でしょ?」
「そういう問題じゃ、」

「私にはそういう問題だよ」

淡々と毒を吐く。ともすれば正論で抗いがたく冷ややかなそれは相手の戦意を奪うように。

「好きだの、恋してるだの下らないよ。
結局は交尾のための前ふりだよ?朔良くんだってそう思うでしょ、ねぇ」

二衣はツンと無表情に言った。

「君たちが、山田くんが好きって言ったのは、私の外見とお金だよ。」

「違う、山田は−−−」

「興味ないから。」

そう言って朔良の唇をふさいだ。

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