泣き虫イミテーション
「偽物じゃないよ」
スマホが震えて、メッセージを通知する。

<二衣 あとは頼んだ。>

いたしかたあるまい、任されてやろう。脇役のくせして出番は多目、どうも若松楓です。
配っている私だから気付いたけど、トランプには爪のあとがつけてある。おニューのトランプになんてことをってかんじだけど、面白いものを見せてくれるから許して上げよう。プソプソ。

だからたち、二衣さんはあんなに堂々と朱本を指定したのだとは思うけど、よくやりますなー。これだけ枚数があればわたしが王様になるのは容易い。キングだけプールしておいて、最後の二択を葉月に引いてもらえば、空気を呼んでくれるから。
しかしこんなあからさまなイカサマ、誰かがそのうち気づいちゃうだろうに。

「さて、「「王様だーれだ」」私なんだけどね」

一応、それっぽいこともしておこう。

「まあ、みんなも気になる。橘さんにいろいろ聞きたいよねー。橘さん、赤?…黒?黒だね。数字はいくつくらいかなー。5以下?…4?3?2?1?…うーん、5かな?黒の5に命令でーす。いまあなたを取り囲む恋愛事情について赤裸々に語りなさい」

「すごいね。読心術でも使えるの?」

二衣さんの白々しさな。

「そんなんじゃないけどねー。」

いや本当にただのイカサマです。


「というわけで赤裸々に。暴いてみせましょう。私の……恋について」
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