泣き虫イミテーション
二衣さんが暴く。

俺たちが隠してきた関係を晒す。それは彼女が俺でいいと選びとってくれたこと。

昨日までと今日から、なにが違うのか俺にはまだ見えないけれど、二衣さんはもう隠さなくていいといってくれた。



橘二衣が暴く。
俺なんかが本当は入る余地もなかった、内側を、明らかにしてしまう。

昨日俺が手をひいたあのとき、その関係を隠すと決意したのとは真逆に。それは俺を選ばないということ。



二衣が口を開いた。
カラオケルームのなかは奇妙な静けさでもって、耳を二衣に傾けている。

「私は噂になった朔良くんのこと、そして光成のこと、どちらにも恋はしてないよ。私のはただの依存。でもミツはちゃんと私に恋してくれていたし、私の内側を満たしてくれるの。だからミツは特別な、私のフィアンセだよ」

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