幻桜記妖姫奥乃伝ー月影の記憶
『いいなぁ、レイくん、色んな人に守られて、大事にされて、愛されてる』


妖霊の声が聞こえた。


部屋の角にちょこんと正座した男の子がいる。


隼人だ。


「僕を守るんじゃない。僕から、僕の中の奥乃姫から皆を守るのが目的だ。万が一のことがあれば、廉姫は僕を殺すつもりなんだから」


礼太は声は少しぶすくれていた。


恥ずかしかったのだ。


『でも、それが結局守るって事でしょう。あの人たちは、レイくんの心を守ろうとしてる。一番大切なものをレイくんが手放してしまわないように』


そんなことは、分かってる。


隼人も礼太が分かっていることくらい分かっているだろう。


「さっき呼んだんだけど、家族のところに行ってたの?」


『ううん、廉姫の気配が物凄く近くにあったから、避難してた。やっぱり、怖いものは怖くてね』


幼い子供の声が、いつの間にか声変わり途中の思春期の少年のものに変わる。


見れば、隼人が殺された年齢の姿に変わっていた。


隼人はこうやって、自由自在に見た目の年齢を変えることができる。


普段、彼の姿は礼太には見えないのだが、『波長』が合う日は礼太にも見えるらしい。


礼太の使役….というよりは単なる友達だ。


『僕も学校に通いたい、ついて行ってもいい?』


「だめ」


『えー、なんで』


「なんでも!」


『そういえば、彼女できたんだって?』


「……できてません」


礼太は、はぁー、と深くため息をついた。







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