はちみつレモン
とばっちりを食らった私は田中君と並んで緒方課長のお叱りを受けていた。いつもは即席説教部屋となる会議室が今日は使用中なので、そのまま課長席の目の前に私達は立たされている。当然ながらフロア中に丸聞こえのはずだった。
仕方ない、田中君の教育係は私なのだ。最も私としては課長に怒鳴られるのは役得なのだけれど。
「反省したらさっさと差し替えてお詫びの電話入れて来い」
そう締めくくられると田中君は返事もそこそこに逃げる様にして自席に戻っていった。
「宮原、お前風邪治ってないのか」
タイミングを逃して残された私に緒方課長が声のトーンを戻して言う。お説教の最中に何度かゲホゲホと咳をしていたから気になったようだった。
「ちょっと咳のし過ぎで喉が枯れてるだけです。もう元気ですよ」
課長が手渡して来た書類を受け取ると、一番上に個包装されたのど飴が五つ乗っていた。
「その風邪周りに移す前にさっさと治せよ。あんまりゲホゲホやってるなら家に帰れ」