はちみつレモン
美樹は感心したように肩をすくめてみせた。
「あ、そう言えば陽菜。あんた先週休んでた最初の日どこ行ってたの」
「……へ?」
「何か買って来て欲しい物あるかなと思って家寄ったらいなかったからさあ。まさか会社サボったわけじゃないんでしょ?」
「……ゲホッゴホッ」
美樹の実家と私の住むアパートは同じ町内の徒歩で行ける距離にある。
私の部屋に来てもらうと美樹と偶然会ってしまう可能性が結構あるので、私と課長のデートは専ら課長のマンションが多い。
社内恋愛が禁止されているわけじゃないけれどどうにも照れ臭いし、同じ部署で働いているだけに色々面倒な事になりそうで私達は誰にも関係を伝えていなかった。
先週風邪を引いて会社を休んでいた間、私は自宅ではなく課長の家で寝込んでいた。自宅にいなかったのはそのせいだ。
元は課長が引いていた風邪だった。それをもらった上に扁桃腺まで腫れてしまって高熱でぐったりしていた私を一人にはしておけないと、終業後に車で迎えに来た課長に強制的に家まで連行された。一人では買い物にも行けそうになかったから、飲み物食べ物を用意され病院に連れて行ってもらえた環境はとてもありがたかった。