はちみつレモン
「えっ」
田中君と美樹が驚いた表情で私を見る。
ごめんね、ケチで。
飴くらい普段ならいくらだってあげる。
だけどこれはダメ。全部私の。
私は魔の手から守った四つの飴を大事にデスクの引き出しの中に収め、包みを開けて残った一粒を掌に出す。口に放り込むと、甘酸っぱい味が広がった。メントールの風味が荒れた喉をすうっと落ち着かせてくれる。
ほらやっぱり課長は私の特効薬だ。
「まだ咳出るし、数少ないから大事にしてるの。欲しかったらコンビニ行って買って来なさい」
「えー、宮原先輩のケチ……」
「陽菜って田中君には厳しいのねー」
二人がそれぞれに感想を漏らす。
何て言われてもいい。それでも課長がくれたのど飴は他の人にあげられない。