【好きだから別れて】
帰宅後そそくさ風呂に入り、真也と会話もしない内布団に入ったあたしは夜を迎えた。


カーテンの開かれた窓ガラスを見上げたら真っ青な空一面に星が煌めいて、今にも手元に降り注いで来そうだ。


いつもなら癒してくれる星達も今夜はこの悲しみを癒してくれそうにない。


どこを向いても落ち着かなくてしつこく寝返りをうち、どうしても寝むれなかった。


悠希の甘い声が耳に残り、離れてくれなくて。


隣にいないのがやるせなくなる。


「幸せになれ!」


悠希は本心でそういったのだろうか。


あたしが知らない男のものになったのになんとも思わないのだろうか。


幸せ?


悠希と幸せになれない?


一人考えていたらクリスマスの日の出来事が思い出され、その日の映像が浮かんだ。


悠希の友達の家族。


子連れで再婚した女。


一分一分たつごとに頭にその日の映像がハッキリ浮かんでくる。


悠希がその時あたしに言った言葉。


「俺は守りきれないかも」


今のあたしは子連れの女と同じ立場だ。


~守りきれない~


悠希の未来に子連れの女との結婚はない。


なぜなら悠希は嘘を言わないと知っているから。


再び悠希の胸へ飛び込むなんて許されないし、あたしにはできない。


お腹の赤ちゃんは紛れもなく真也の子で、悠希の子では…


仕事で疲れきり、隣で寝息をたて眠るを真也を見て思っていた。


真也を捨てて人生を歩んでいけるのか。と。


電話が元彼だと気付いてたのに何も聞かない彼を捨てていけるのだろうか。と…


悠希に電話をしてしまえば答えは自ずとみつかるのに。
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