【好きだから別れて】
父の存在などかき消す堪えきれぬ痛みで、日曜の病棟内に響き渡る激しい罵声と怒濤の悲鳴がこだまする。


「早く出せよ!耐えらんねぇ!!」


「切れ!意識飛びまくってやべっつの!」


「なんなんだよ!!ぁぁあああ!!ガキいらねぇえ!」


息絶えたかけたり、半端ない力が爆発したり。


生きてるのか死んでるのか、どうにかなってしまいそうなこの体を抜け出し捨ててしまいたい。


促進剤のせいか陣痛のせいか。


あたしは腰近くまである長い髪を振り乱し、本性むき出しで獣と化していた。


再度訪れた痛みで意識が朦朧とし出した頃。


「産めそうかどうか子宮口の開き見るからね」


悶え苦しむあたしの元に走り寄ってきた二十代そこらの若い看護婦が下半身に指を差し込み、グイグイ中をかき回す。


それすら煩わしくて足を折り曲げ、加減なしに蹴り倒しそうだった。


「あらっ、子宮口全開!促進剤のおかげか進みがいっきだね。今先生呼ぶから急いで分娩台に移動しよう」


「だぁあああ!いきみたい!」


「まだダメ!ツラいけどこっちまで歩いて!」


「いきみたいぃぃぃ!」


ベッドを降り、歩いて20歩程度の所に置かれた分娩台まで自力で歩き、股を開いて両足を分娩台に縛り付けられる。


格好悪いなんて言ってる余裕のないあたしはすでにぐったりで、産む力はほぼ残ってなく悲鳴だけをあげ続けた。
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