【好きだから別れて】
あたしは微力ながらも真也に協力しなければと、家計を把握する目的で家計簿をつけていた。


毎月しっかり収入・支出を記入し、家賃代・食費・光熱費・雑費・その他…


一円単位まで事細かく記入し、漏れなく正確にお金の流れを把握していた。


もちろん節約にも励み、なれないながらとにかく貯金しようと懸命にいたる所を切り詰めた。


過去は真面目とは程遠い生き様だったのに、光がいるからこそ親の義務を果たしたくて一生懸命になれる。


しかし、生活費を何度計算しても赤字に転じてしまって…


贅沢など徹底的に削って細々と生活しているのに、光のオムツが買えなくなる計算になってしまう。


どこがこんなに家計を圧迫しているのか。


どこを削れば少しはラクになるのか頭を絞り、支出の項目をしらみ潰ししてみる。


するといつも書き込みたくない厄介な項目がこっちを睨んだ。


「やっぱこれだよ…」


テーブルに肘をつき両手で頭をかかえ目をきつく閉じ、あたしは前屈みにうなだれた。


真也が十代の頃に作った借金。


その支払いがいっこうになくならない。


CMで軽快に金貸しを歌う金融業数社の借金だった為、利子が高く元金がなかなか減らない状況だ。


乳飲み子をかかえたあたしに大金を作る手段はないが、どうにかしなければ借金まみれになってしまう。


借金なんて。


金の苦労なんてまっぴらごめんだ。
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