【好きだから別れて】
金は人を狂わす恐ろしい魔力を持っているだけに、金が絡むと家庭内もギクシャクしだす。


現にあたしの両親や家族は金が原因でバラバラになったのだから。


幼少期に起こった出来事はいまだ薄れたりせず、思い出なんてものはくすんだ色で染まりきっている。


光に二の舞になって欲しくない。


自分と同じ苦労はさせたくない。


その思いが膨らみ、借金を作ったとうの本人へあたしの牙は向けられた。


「百万単位の借金ってあんた頭おかしいの?どう頑張ったらこんなに膨れるわけ!?」


「飲みに使ったり車とか色々あんだよ」


「ふ~ん。オヤジのガンがどうたら言ってたけど結局あんたの娯楽なんじゃん。それって歩と光に関係なくね?」


「お前にはわかんねぇだろうが男には付き合いがあんだよ!」


「はっ!?んじゃてめぇの知り合いやら友達は借金だらけだな!」


「俺の仕事関係の奴なんてもっと借りてるし、友達も借りてんだ!んなもん当たり前なんだよ!」


開き直ったうえ、世間に照らし合わせ正論を振りかざしたつもりでいる真也。


ふてぶてしい態度でふんぞり返り「何も知らねぇのはお前だ」とばかりに見下した目付きでこっちを見てくる。


どう考えても真也は親になる器を持っていない。


自分の借金が原因で生活がまわらないなんてどうでもいいし、光にも火の粉がかかってるのに振り払う気すらない。


真剣に話してるのが馬鹿らしく感じ、あたしは本ギレをかました。


「てめぇのダチはバカばっかだな!よくそんなんで友達とかぬかせるよな!お前ら頭いってんじゃね!?」


「俺のダチを悪く言うな!歩のダチのがいってんだろ!俺はダチが大事なんだよ!」


「腐ったダチもって傷のなめあいってか。マジありえねぇ!ガッカリだわ!」


言えば言った分、互いを罵倒し合う汚い言葉が狭い空間に飛び交う。


一歩もひく気のない両者はどちらも自分が正しいと思っている。
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