【好きだから別れて】
「あっそ!あんたがその気なら離婚してくんない!?」


「離婚ってお前何言ってんの!?結婚とか離婚とかそんな簡単なもんじゃねぇだろ!?」


「簡単だろ!夢だプライドだ意地だ。んなもんで光食わせらんねぇくらいなら離婚でいい!てめぇなんざいらねっつの!」


家族というものがこれで許されるならあたしは家族なんて幻想ぶち壊してやる。


生きる手段は選ばない。


一回や二回の離婚。


痛くも痒くもない。


何も伝えられない光から父親を奪うのは違うけど、あたし達は今日食う金が必要なんだ。


真也のくだらないプライドに付き合う時間や余裕。


んなもんあたし達には残ってない。


「あぁぁぁあ!話になんねぇ。勝手にしろ!」


「勝手にするっつの!」


離婚を切り出しても真也は自分の意志を貫きプライドと友達を優先して結局折れもせず、不機嫌な態度をとってさっさと布団へ潜り込んだ。


「馬鹿な女に捕まって被害者は俺だろ」とでも思ってるんだろう。


そこから真也は一切口を開かなかった。


気まずさの中に居たくなくてあたしは真也とは別の部屋へ光を連れて行き、光が眠りにつくまであやし続け疲れきった体を横にした。


いくら真也に罵られようが邪険にされようが絶対ひくもんか。


借金を綺麗にしたい。


借金を増やしたくない。


それに何の問題があるんだ。


あたしと真也の間には深い亀裂が入り、家族という虚像は音もなく崩れ、一緒にいる意味はもうないと結論付いたんだ。
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