【好きだから別れて】

・脱け殻

ほんのつかの間の骨休めで訪れた実家に滞在したのはたった1日。


その1日でも真也と離れられたのはあたしにとってかけがえのない時間で、帰宅したくなかった。


けど専業主婦をやってるとそんな簡単なワガママさえ通用しなく、家庭を守らなければいけない立場で、帰宅せざるおえない。


光を連れ泣く泣く真也のいる我が家へ帰宅し、家へつく前に悠希の影に気付かれまいと携帯の履歴は慎重に削除しておいた。


愛して止まない悠希と話したなんてバレたら、次は容赦なく何かをされてしまう。


証拠隠滅をしとかなければ光が危ない…


真也はよほどむしのいどころが悪かったのか、あたし達が帰宅して数日間はいない者扱いをしてきた。


食事を準備しても食べずにコンビニ弁当を開いたり、同じ空間を共にすればテレビに見いりダルそうリモコンを操作して横になっている。


かと思えば何日か後口を開くなりチンピラ口調で喧嘩をふっかけてきて、平気で心を折ってくる。


喧嘩の嵐に必ずついてくるのは金の件で。


毎日借金取りに追われてる感覚がして生きた心地はしないし、行動が腹立たしい。


人が作った借金に振り回されこんなに苦しいなんて…


「なんでこんな思いしなきゃいけないんだ」って真也と絶えず喧嘩するたび思えて仕方ない。


まだ父親らしく光を大切に扱うなら考えようもある。


が真也もあたたかい家庭で育ってないからだろうか。


全く家庭的なタイプからかけ離れていて、あまり光を抱きもしない。


オムツ交換も指で数えられる程度したぐらいで、育児全般はあたしの仕事だった。


光の夜泣きが始まると決まって「うるさい!」の暴言で、こっちを見向きもせず、背中を向けて眠る。


「二人で育てよう」


そんな言葉を言った真也は、あたしが理想とする父親としての役目を果たしているとは到底思えなかった。


二人のすれ違いは結婚当初からずっとで、互いに不満だらけだったろう。
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