【好きだから別れて】
「慶太って俺と同級のあいつか!?」


「…」


「あいつかって聞いてんだろ!」


「…。うん…」


自分が口走ってしまった慶太の存在。


後悔しても後の祭りだ。


「へえ~。拓と慶太同じ中学だったよな?お前あいつの携帯番号知ってるか?」


「おお。ちょい待って」


話の流れがおさまらず、智也はあたしの目の前で慶太に電話をかけようとし出す。


「もう構わないで!慶太関係ないやん!あたしが一方的に好きなだけなんだよ!」


焦って止めようと試みるも智也は聞く耳持たずで、拓の携帯を手際よく操作し鳴らす。


「マジやめろや!」


立ち上がり携帯を奪い取ろうとすると、拓は面白がってあたしの両手を掴み気持ち悪く笑っていた。


たかが女のくせつけあがんなと言いたげにして。


「ざけんな!マジざけんな!」


痛い視線を浴びせた周りは確実に見ているはずなのに、誰一人止めやしない。


度胸のある奴なんていやしない。


いや。


智也のヤバさと傍若無人が伝わったのだろう。


人は他人により自らが傷付くとわかると、知らんぷりする生き物だ。


そんなのはわかっていても、内心藁にもすがる思いで誰かに助けて欲しかった…
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