【好きだから別れて】
時間にしたら三時間か四時間。


カラオケ、酒。


カラオケ、酒。


時々それなりに会話。


をして終わりの時間が迫まってきた。


何曲か歌い、酒も結構な量を飲んでにみんな互いに慣れてきたのか出だしよりは満足そうだ。


そろそろ悠希のアドレス聞こうかなぁ。でも…


悠希が嫌な奴ならすぐに聞ける。


なのにあまりにもいい人過ぎて、あたしの中に迷いと罪悪感が入り交じる。


酒がきれそうになるたび注文してくれたり、求めればノリよく歌ってくれたりするもんだから。


悠希の顔を見ては喉元まで出掛かる言葉も、いざ目が合うと口ごもる。


ほれ悠希に聞かなきゃ


携帯を出してはしまい出してはしまい何度も同じ行動を繰り返し、不審者並みの動き。


しかし、時は残酷な奴だ。


待ってなどくれない。


結局あたしはアドレスを聞くタイミングを逃し、カラオケは終了を迎えた。


「ど~れ、帰るか」


「えっ、あ、うん」


目的を果たせず焦るも慶太の合図でみんな席を立ち、ついあたしもつられてしまい会計を済ませ外に出た。


カラオケから駐車場へ向かう。


と、来た時は真っ暗だった空はほのかに明るくなり、朝を匂わす。


青紫っぽい空の下にアスファルトの匂いが微かに香る。


「朝だよ朝。やべぇ」


「あはっ」


あたしが腕を空に向け背伸びし呟くと、悠希はこっちを見て目を細め笑っている。


うわっ。独り言聞かれて恥ずかし~い


間抜けな姿を美形に見られるのは得意ではないから、悠希の声に気付かぬフリをして車に乗り込んだ。


「楽しかったな。みんなでまた飲みてえな」


車が走り出すと慶太は余韻にひたり真っ赤な顔で話し、結構楽しかったらしい。


「そうだね。またみんなでカラオケ行こう」


「唯も楽しかった~また飲もう」



行きの車内とは雰囲気が違い、家に着くまで楽しく会話は弾み、賑かなままだ。


唯が彼氏もちだったおかげで慶太は唯を恋愛対象から外し、それがあたし的にはバランスよく最後は気持ちよく楽しめた。
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